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※こちらの台本を利用する際には、必ず【台本を使うにあたってのお願い】を読んでからにしてください

 

~20分  微恋愛/ハッピーエンド/和風/~20分 ♂1:♀1:不1

 

※原作はぬいぐるみ♪ですが、それも私なので問題はありません

 原作→http://www2.hp-ez.com/hp/nuigurumi7/page8/2

 

 

雪華(せつか) ♀ 実年齢は500超えだが、見た目、声的には18歳くらい
樹(いつき) ♂ (22歳) 若くして村長となった青年
N 不問
 

――――――――――――

 

役表


雪華(せつか)♀:
樹(いつき)♂:
N不問:

――――――――――――――

N:「ピキリと赤い空の下。降り積もった雪の上空になにかが凍るような音が響いた。」

雪華:「あっ……ごめんね、虫さん。さわってごめんね……殺して、ごめんね。
    ……なんで、私は、雪女なの……こんな、こんな力、なければよかった……!」

N:「雪女。今、宙を浮かんでいる雪華は人間ではない。
  妖―雪女。妖は人の心の闇から生まれしもの。名は闇がつける。性格はその心の宿主の性格が影響される」

雪華:「なんで、こんな宿主から私は生まれたの……もっと、残酷な人間ならよかったのに」

N:「うつむき、唇を噛みしめる雪華。そんな雪華の耳にサクサクという足音が届いた」

雪華:「人間……!? 早く変化しなきゃ。えいっ!」

N:「雪の上に舞い降りた雪華の体を燐光が包み込んだかと思うと、一瞬でその光は消えた。
  だが、その姿は人外のモノから人間の女の子の姿に変わっていた」

雪華:「山の精霊との約束破るところだった……よかった、間に合って」

N:「雪女は各自が住む山の精霊と約定を交わしている。精霊とは山の気。山の生命そのもの。だから精霊が災害を起こすことも防ぐことも不可能。そんな悠久の時を過ごす精霊だが地が穢れ、力が衰えれば山は死ぬ」

樹:「誰かいるのか」

雪華:「え、あの、えーっと、その、あの……」

N:「それこそ生まれてから五百年を優に超える雪華。だけど妖の中ではまだまだ未熟。
   生まれたてとも呼ばれるくらいだ。しかし、人間に比べたらはるかに長い。
   そんな雪華は山から下りたこと、いや、人間と話したことなど皆無なのだ」

樹:「お前、村じゃ見ない顔だけど街から来たのか?」

雪華:「え、あの、はい……」

雪華M:「ま、まちってなに?人間の世界はわからないよっ~!」

樹:「直に日も暮れる。泊まるところはきまってるのか?……とは言っても、この村は宿なんてないけどな」

雪華:「えと……」

樹:「俺の家に来るか?」

雪華M:「人間ってこんなにも簡単に知らない人を招くの?」

雪華:「え、でも……」

樹:「ここは灯りになるようなものもない。日が落ちたら真っ暗になる。安心しろ、手はださない」

雪華:「は、はい……」

樹:「行くぞ」

雪華:「っ! え、あ、ごめんなさい……その、手をつなぐのは、慣れていなくて……」

樹:「いや、俺も悪かった。ついてこい。はぐれるなよ」



N:「二人が藍色になりかけの空の下を歩く。二人の間には沈黙が漂っていた。先にその沈黙を破ったのは男だった」

樹:「おまえ、名前は?」

雪華:「雪華です……」

樹:「そうか。俺は樹。この村で村長をしている」

雪華:「そう、なんですか」

N:「どう考えても20代前半にしか見えない若竹色の着物を着ている樹。雪華はその事実に戸惑いながらも歩き続けた」



樹:「着いたぞ。ここだ」

雪華:「ここが……」

N:「大きいとは言えない、しかしながらとても綺麗なその木造建築の中に入って行った樹を見ながらも、雪華は戸口でうろうろしていた」

樹:「どうしたんだ。ほら、入れ」

雪華:「お、お邪魔します……」

N:「目に映るものすべてが初めての雪華はずっときょろきょろし、樹はその姿を見て不思議に思っていた」

樹M:「この村だけでなく、街のほうの家もこんな感じのはずだ。つくりは大体同じ。なぜこんなにも珍しそうに見ている。この子は本当に街から来たのか?」

樹:「飯にしよう。ここの囲炉裏で体をあっためながらすこし待ってろ」

雪華:「あ、行っちゃった……これ、囲炉裏っていうんだ。……きれい。それに、とてもあったかい」

N:「雪女である雪華。しかし、雪女というのは決して温かいものがダメなのではない。苦手なだけなのだ。
   雪華が囲炉裏の温かさにうとうとし始めたころ、樹が戻って来た。手にはお鍋」

樹:「鹿の肉だ。食えるか?」

雪華:「はい、たぶん」

N:「いつもは山の生気を軽く食すだけの雪華は木の実が大好きなため、ときどき食べていたので自分が人間の食べ物を食べれることは知っていた」

樹:「ほら。おかわりほしかったら言え」

雪華:「ありがとう、ございます」

樹:「いただきます」

雪華:「……いただきます。……ん……おいしい……」

樹:「それはよかった。量はいっぱいある。遠慮せず食え」

雪華:「はいっ」



樹:「ごちそうさまでした」

雪華:「ごちそうさまでした」

樹:「ちょっと待ってろ」

N:「空になった鍋を持っていき、代わりにかわいらしい千代紙の袋をもってきた。袋が揺れるたびにシャラシャラという音がしている」

樹:「金平糖だ。やる」

雪華:「こんぺい、とう?」

樹:「見たことないのか。……っしょっと。(千代紙でできた袋の封を切る)こんな感じの星の形をした砂糖の塊だ」

雪華:「ちっちゃくてかわいい……でも、いいんですか?」

樹:「どうせうちにあっても食わねぇからな」

雪華:「ありがとうございます。いただきます」

樹:「あぁ。袋開けるとき気を付けろよ。破けやすいからな」

N:「外はもう漆黒の闇に覆われている。家の中を照らすのは部屋の隅に置かれたろうそくのみだ」

樹:「そろそろ寝るか。ついてこい。客間まで案内してやる」

雪華:「はい」

N:「部屋まで案内し、布団を敷くとおやすみと言い残し、樹は部屋を出た。樹が部屋を出てもなお、雪華は変化を解かない。いや、おそらく解くことを忘れている。変化は妖力の消費がほとんどないので影響はないだろう」

雪華:「これが、お布団……モフモフだ……あったかい…………あったかい……人間は、あったかい。あの食べ物も、この家も、あの火も、この布団も。
    ……樹、さん……なんでこんなにも一緒にいたいって、思っちゃうの……」



N:「布団に丸まって雪華が寝息を立て始めたころ、樹は自室に戻る途中だった」

樹M:「なぜ、なぜ俺は、あのしらない人を家に招いたのだろうか……名前しかしらないあの女を。雪華、か…
   なぜ俺はこんなにもあいつの声が聴きたいと思うんだ……」

N:「樹はしばらく廊下にたたずみ、雪華の部屋のほうを見つめていた」





雪華M:「この音は、なに。とても、低い……起きなきゃ……あれは……あれは…………」

雪華:「っっっ!?」

N:「言葉通り飛び起きた雪華は走りだした。その足音で樹が部屋からでてきた」

樹:「どうした」

雪華:「……、昨日はありがとうございました。あなたに会えて本当にうれしかった。この恩は必ず返します。さようなら」

樹:「おい、せつ……! あれは……」

N:「雪華の体を燐光が包み込み、一瞬でその変化を解いた。そのまま宙へと浮かび、飛んでいった」

樹:「白い髪、不思議な紋様の着物……? …っ! この音は! まさか!」

N:「雪華の後を追いかけるように樹もまた、走り出した」



雪華:「やっぱり、雪崩……」

N:「村の端の上空。そこに雪華は浮かんでいた。目の前の山からは猛スピードで斜面を滑り落ちる雪の塊。
  村人がその音を聞きつけ家から出て、そして絶望した。
  そんな中、雪華は一人静かに、だけど燃えるような火を瞳に灯し、雪崩を見ていた」

雪華:「これが…私にできる最大の恩返し! 氷壁よ、その行方を阻む壁となれ!! はぁあああああああ!!!」

樹:「はぁはぁはぁ……
   ……!! 雪華の手から、分厚い氷の壁が、すこしずつ形成されていく……
   それに、姿が変わって……金色の目に、銀の髪……?」

N:「雪崩が壁に当たる」

雪華:「っっ!! こんのぉ!!」

N:「全身からほとばしる妖気が雪華の着物をバタバタとはためかす。 ぴしりと、頬に亀裂が入った」

樹:「雪華!! やめろ!!! 亀裂がどんどん……やめろ! やめてくれ! お前の体が持たない!!」

雪華:「くっ!! てりゃぁあ!!」

樹:「聞こえてないのか……くそっ! どうしたら……」

雪華M:「樹さんがわたしの名前を呼んでいる。でも、それにこたえることはできない。
    私は、これで妖力が尽きる。妖力が尽きれば妖は消滅する。でも…それでも、守りたいから。
    あのあたたかい家を。樹さんを。守りたい。だから、だから消えても構わない。
    樹さんを守れるのならば。」

雪華:「う……りゃぁぁぁぁぁ!」

樹:「雪崩が、おさまった……! 雪華!!」

N:「力を失い、地にたたきつけられた雪華の髪は白に、目の色は青に元に戻っていた。そんな雪華を樹は抱き起し、手を握った。二人は、初めて触れ合った。」

雪華:「いつき……さん……」

樹:「どうして、どうしてそこまでして……」

雪華:「ま、もりた、かった……いつ、き、さんを、まもり、た、かった……」

樹:「どうしてだ!」

雪華:「ふふっ……いつきさん、あったかい、です……」

樹:「いくらでもあったかいものなら用意してやる!」

雪華:「いつき、さん、ありが……とう…………つぎは、にんげんで、うまれ、たい、な…」

樹:「せつ、か……?せつかあああああああああああ!!!!」

N:「雪華の体が割れた。パキリと。氷のように。そして、霧となって散った。後に残されたのは彼女が着ていた着物と、白い花が一輪。
  その様子を見ていた村人は化け物がいなくなってくれてうれしいと非情な声を上げる。人間は異端のものを怖がる生き物。たとえそれが恩人であっても。
  樹は泣いた。その着物を握りしめながらひたすらに泣いた」

樹:「せつか……!」



N:「たかが一度。されど一度。二人は一度出会い、そしてもう二度と出会うことはない。
  しかし、二人の間には確実に芽生え、育とうとしていたものが存在した。





  そして、幾百もの年月が過ぎ去った」


雪華:「えーと……ここは……どこ?あれ、入学式会場ってこっちじゃなかったっけ?でも大学入ってこっちだって……」

樹:「おい」

雪華:「は、はい」

樹:「もしかして、新入生か?」

雪華:「は、はいっ」

樹:「入学式会場はこっちじゃねぇぞ。案内してやる。来い」

雪華:「えっ?あの、手……」

樹:「おまえ、名前は?」

雪華:「…雪華です」

樹:「せつか、か。俺は樹だ」


N:「運命の歯車は、あの時、二人が出会った瞬間、回りだしていた」

――――――――――
<漢字の読み>
妖→あやかし
変化→へんげ
燐光→りんこう
約定→やくじょう
若竹色→わかたけいろ
紋様→もんよう
村の端→むらのは
雪崩→なだれ
氷壁→ひょうへき
幾百→いくひゃく

 

 

 

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