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~20分 ♂2:♀3:不0 ファンタジー/シリアス/オリジナル
ルナ=シュラプネル♀……年齢不詳だが、見た目は10代後半。魔女だが人間と言い張る
ノワールに対してつっけんどんな態度をとる
基本はクールだが、感情的になることも
ノワール=アヴァロン♂……表情が少ない静かな青年。
常に頭の中で思考を巡らせている。ヴァンパイア界の第一王子
第一王子であるがゆえに知らないことも多い
シンシア♀……ルナの使い魔の黒猫。性格はルナに共通してるものがあるが、基本的に元気でかわいい(ここ重要)
猫verと人間verでは声を少し変わる
ルナほどではないが、ノワールに対してつっけんどんな態度をとる
ヴァレリア=ディラック♀……ノワールの側近。20代くらいの女性。お姉さんキャラ
ファビウス=ランドルフ♂……ノワールの側近。10代前半でかわいげのないけど元気な男の子。ツンデレなところも
シンシアとよくケンカしてる
アルフィー♂……ノワールの使い魔で蝙蝠の見た目17歳の少年。ノワールに忠実で物静か
男♂……とりあえず、悪役。掟を破り、ノワールに追いかけられている
――――――
役表
ルナ♀:
ノワール♂:
シンシア♀:
ヴァレリア♀:
ファビウス&男&アルフィー♂:
――――――
ノワール「赤い月夜」
シンシア「それは不思議な夜」
ルナ「人ならざるモノ」
ファビウス「それは人間に紛れて暮らしている」
ヴァレリア「あなたは、見つけられる?」
ノワール「赤い月に導かれて 第一話 始まり」
シンシア「ねぇ」
ルナ「なに?」
シンシア「月」
ルナ「ん? あぁ……赤いわね」
シンシア「どうする?」
ルナ「そうね……
カラスがいつにも増してうるさいわ」
シンシア「あいつらの声頭に響く……
ここは嫌。散歩行きましょうよ」
ルナ「めんどくさいわ」
シンシア「あいつらの声嫌いなの」
ルナ「我慢しなさい」
シンシア「いやよ」
ルナ「…………はぁ。わかったわよ」
シンシア「やった♪」
ルナ「歩くわよ」
シンシア「えー、森抜けるだけなら転移魔法使ってもいいじゃない」
ルナ「ダメよ。疲れるもの」
シンシア「ダウト。 あの術は初心者でも使えるぐらい魔力消費少ないじゃない」
ルナ「いや。歩かないなら行かないわよ」
シンシア「む~……わかったわよ」
ルナ「まったく……おいで」
シンシア「だっこ」
ルナ「ほんと、しょうがないわね」
シンシア「ありがと、ルナ」
ルナ「ふふっ……まったく、本当にしょうがない子」
<街中>
ヴァレリア「ノワール様!」
ノワール「どうした、ヴァレリア」
ヴァレリア「リビア川の近くに指名手配犯がいるとの情報が」
ノワール「わかった。行こう」
ヴァレリア「御意」
ルナ「いろんなモノが蔓延ってるわね」
シンシア「魔物に幽霊に……」
ルナ「ん……?あとは、」
ノワール「待て!!」
男「ひいぃ!」
ルナ「そこにいるヴァンパイアとか、ね」
シンシア「え、あれヴァンパイアなの?」
ルナ「えぇ、そうよ。ほら、人からかけ離れたくらい顔が整っていて、瞳の色は赤。ヴァンパイアの特徴よ」
ノワール「君、どこの一族だ」
男「えっと……」
ノワール「早く言って」
男「その~、えっと……」(ちらちらとルナの方を見る)
シンシア「ねぇ、別の場所に行きましょう」
ルナ「そうね。めんどくさいことに巻き込まれたくはないわ」
ノワール「さぁ、言え」
男「っ……!!(いきなり立ち上がり、ルナの方へ走る)」
ノワール「!?」
男「ちぃ!!」
ルナ「っ!?」
シンシア「にゃあ!?」
男「まさか第一王子に見つかるとはなぁ……俺としたことがうっかりしちまったぜ……」
ノワール「人質をとるとは……」
ヴァレリア「人間を……しかも女の子を……!」
男「はっはっはっはっは!!いくら王子で強いといってもこの状況じゃ手出しできないだろう!」
ノワール「……っ」
シンシア「ルナ!」
ルナ「わかってるわよ。大丈夫」
男「…………?」
ルナ「この手を放しなさい、下種が」
男「なっ……!」
ルナ「さもないと、痛い目見るわよ」
ヴァレリア「だめよ! そいつは人間じゃないのよ!」
ルナ「十分にわかってるわ」
ヴァレリア「え?」
男「このクソアマ……!」
ルナ「でも……」
男「つぶしてやる!」
ヴァレリア「だめっ!」
ルナ「(小声)<フィオ ローゼ>」
男「がはっ!!」
ヴァレリア「え? 今なにが……」
ノワール「あいつが吹っ飛んだね」
ヴァレリア「いや、それは見ればわかりますけど、あの少女は何を……」
ルナ「私は強いもの」
男「カハッ、ゲホッ、ゴホッ……クソが……」
ノワール「そこまで」
男「なっ……」
ノワール「『許可なしで人間に牙をたてるべからず』この戒律を破った君を連れ帰る。ヴァレリア」
ヴァレリア「はい、なんでしょうかノワール様」
ノワール「こいつを連れて先に帰って」
ヴァレリア「え、ノワール様は?」
ノワール「少し用事ができた」
ヴァレリア「御意に。早めにおかえりくださいね」
シンシア「ルナ!」
ルナ「シンシア、大丈夫?」
シンシア「私よりルナよ! 怪我ない?」
ルナ「当たり前じゃない」
ノワール「君、大丈夫……って、猫がしゃべるのか。初めて見たな」
シンシア「私をそこらへんの猫と一緒にしないで! ふんっ」
ノワール「ごめんね」
シンシア「帰ろ、ルナ」
ルナ「もう散歩はいいの?」
シンシア「うん、もう十分」
ルナ「そう。わかったわ」
ノワール「待って」
ルナ「……なに?」
ノワール「君は、魔女?」
ルナ「さぁ、どうかしら」
ノワール「教えて。こちらの戒律に関わるから」
シンシア「行きましょ、ルナ」
ルナ「えぇ」
ノワール「させないよ」
シンシア「っ……瞬間移動……」
ノワール「これは大事なことなんだ。教えてもらうまで帰すわけにはいかない」
ルナ「……わかったわ」
シンシア「ルナ、」
ルナ「私は『人間』よ」
ノワール「そう。なら……」
ルナ「質問には答えたわ。だから、帰るわね。シンシア」
シンシア「はーい」
ノワール「させない」
ルナ「ふっ……(小声)<シェルラ>」
ノワール「消えたか……でも、逃がさないよ」
<家>
ルナ「ふぅ……」
シンシア「ごめんなさい、ルナ……私が散歩に行こうって言ったから……」
ルナ「何言ってるのよ。問題なんてなにもなかったじゃない」
シンシア「でも! 危険な目にあわせちゃったわ……ほんとうに、ごめんなさい……」
ルナ「全く……バカな子ね」
シンシア「っ……」
ルナ「二人とも無事だったんだからいいじゃない。ね?」
シンシア「ルナぁ……」
ルナ「ほら、上行くわよ」
シンシア「うんっ!」
<いきなり家の中にあらわれる>
ノワール「おじゃまします」
シンシア「っ!?」
ノワール「こんばんは、お嬢さん」
ルナ「っ……なぜ、あなたがここにいるの」
ノワール「君が『人間』だとしたら、少し困ったことになるから追いかけてきた」
シンシア「どうして……結界があったはずよ!」
ノワール「それは対人間用。いや、あとは魔物に幽霊か」
ルナ「どうして、そんなことまで……」
ノワール「外にはそういう類がたくさんいたのに、この敷地内だけはなにもいない。
それに、ヴァンパイアが来ることは想定してなかった。違う? 君は賢い。うまく匂い消してたからさすがの俺でも苦労したよ。
ヴァンパイアに関しては変に結界をはるより、匂いを消していたほうが気付かれにくいから」
ルナ「……えぇ、そのとおりよ」
ノワール「で、君は『人間』?それとも……」
シンシア「ルナ、どうするの?」
ルナ「もう、隠しようがないじゃない。それに、敵意も全くないから大丈夫だとは思うわよ」
シンシア「ごめんなさい……」
ルナ「シンシアのせいじゃないわ。あなたのお察しの通りよ。私は『魔女』」
ノワール「ならいい」
シンシア「え?」
ノワール「戒律に『人間に存在を認知されるべからず』ってあるんだが、君は魔女だからそれに当てはまらない」
ルナ「あら、でも人間よ」
シンシア「ルナ……」
ルナ「私は常人よりちょっと力があって、ちょっと長生きな人間よ」
ノワール「……ずいぶん、人間であることに執着してるみたいだね」
ルナ「だって私は『人間』だもの」
ノワール「君は、どうしてそこまで執着するんだ?」
ルナ「……あなたに話す義理はないわ」
ノワール「そうだね、初対面なのに踏み込んだこと聞いた」
ルナ「えぇ。ってことで、お引き取りください」
ノワール「どうするか……」
シンシア「なによ。ルナ自身は人間でも、あなたたちが魔女と区別するならそれでいいじゃない。さっさと帰って」
ノワール「でもなぁ……んー……そうか」
ルナ「まだ、なにか?」
ノワール「しばらく君のそばにいさせてもらうとしよう」
ルナ「は?」
シンシア「は?」
ノワール「君が『人間』なのか『魔女』なのか。判断がつくまではそばにいることにする」
ルナ「嫌よ。絶対嫌」
ノワール「なぜ」
ルナ「ここはシンシアと私の家。他人、というか他種族なんて絶対踏み入れてほしくないわ」
ノワール「そっか。でも、引かないよ? 俺らの沽券にかかわる重大な問題だからな」
ルナ「……シンシア。下がっていなさい」
シンシア「ルナ!」
ルナ「大丈夫だから」
シンシア「でも…………わかったわ。怪我だけはしないでよね」
ルナ「えぇ」
ノワール「何をする気なんだ?」
ルナ「言っても出て行ってくれないのなら……
(息を吸う)
力尽くで追い出すまでよ! <ファネル ジェイル>!」
ノワール「火の鞭か……でも、無駄かな」
ルナ「っ!? 掌でつかんだ……」
シンシア「嘘でしょ……」
ノワール「俺、ヴァンパイア界で身体能力が他より高いんだよ」
ルナ「っ……こんのっ
<シェラヴィズ ウォーリア!>」
ノワール「痛いのは嫌いなんだけど……よっ、と」
ルナ「!? いったいどこに……」
ノワール「ここだよ」
ルナ「天井……<ヴィラット ビースト>!」
ノワール「ふぅ」
ルナ「ちょこまかと……!!」
ノワール「知ってる? ヴァンパイアって他のどの種族よりも強いんだよ?」
ルナ「こうなったら……」
シンシア「っ! だめよルナ! 家を壊すつもり!?!?」
ルナ「また建てればいいだけの話じゃない!
それよりもこいつを追い出すことが最優先よ!!」
シンシア「バカじゃないの!? やめなさい!」
ルナ「『我、月の女神に魅入られし者なり』」
シンシア「って、その詠唱、ここら一帯を吹き飛ばすやつじゃない! 冷静になりなさいよ!」
ルナ「『我が名の下に応え給え』」
シンシア「ルナ!!」
ノワール「そこまで、だよ」
ルナ「っ……」
ノワール「落ち着いて」
ルナ「誰のせいだとっ……」
ノワール「俺のせいだけど、やりすぎ」
ルナ「くっ……その腕を放しなさい……」
ノワール「だめ」
ルナ「このっ……」
シンシア「いい加減にしなさい! ルナ!」
ルナ「っ、シンシア」
シンシア「大丈夫だから、大丈夫だから。落ち着きなさい」
ノワール「(小声)ごめんね」
ルナ「私は……ぁ……」
ノワール「よっと」
シンシア「ルナ!?」
ノワール「大丈夫だ、猫ちゃん。気を失ってるだけだから」
シンシア「よかった……」
ノワール「とりあえず、寝室に案内してくれない? さすがに床で寝かすのも可哀想だから」
シンシア「……わかったわ。こっちよ、ついてきて」
ノワール「ありがとう」
シンシア「別に……」
<寝室>
シンシア「ここよ」
ノワール「へぇ……なかなか広いね」
シンシア「早く寝かせて」
ノワール「はいはい」
シンシア「ルナ……」
ノワール「君は、この子が好きなんだね」
シンシア「当り前よ。だってご主人様なんだもの」
ノワール「あんなに普段から取り乱すのか?」
シンシア「あなたには関係ない話よ」
ノワール「そうだね、ごめん」
シンシア「さっさとこの家から出て行って」
ノワール「それはできない相談だね」
シンシア「なんでよ。あの力を見たでしょ? もう満足じゃないの?」
ノワール「でも、本人は『人間』と言い張ってるからね」
シンシア「そう」
ノワール「だから、見極めるまで俺はここにいるよ」
シンシア「梃子でも動くつもりはないのね」
ノワール「そうだね」
シンシア「変なの……」
ノワール「うん」
シンシア「…………わかったわよ」
ノワール「ありがとう」
シンシア「だけど! これはあくまでも使い魔である私の判断。最終的に決めるのはルナよ」
ノワール「わかったよ」
シンシア「適当にこの階の空き部屋を探して使って」
ノワール「わかった。探してくるね」
(ノワール退室)
シンシア「ルナ…………早く目を覚まして……ねぇ、ルナ……」
<外>
ノワール「アルフィー」
アルフィー「はっ。お呼びでしょうか」
ノワール「ヴァレリアとファビウスに伝言を」
アルフィー「内容はいかように」
ノワール「『人間界にとどまることになった。しばらくは戻れない。ごめんね』ってお願い」
アルフィー「仰せのままに、マイ マスター」
ノワール「ごめんね、アルフィー。疲れること頼んで」
アルフィー「いえ、私は貴方様の使い魔。貴方様の頼みならば苦でもありません」
ノワール「お願いね」
アルフィー「では」
(アルフィー、飛び立つ)
ノワール「ファビウスがここに乗り込むのは明日の夜か……いや、ファビウスだけじゃなくヴァレリアもだな。
さて、片づけをしようかな」
<リビング>
シンシア「うそ、綺麗……」
ノワール「あの子、目は覚めた?」
シンシア「まだよ。まだ……」
ノワール「そうか……ちょっとやりすぎたかな」
シンシア「……ルナになにしたの」
ノワール「少しだけ術をね」
シンシア「ルナが今起きないのはそのせいなの?」
ノワール「いや、あの子にかけたのは5分程度で覚めるものだよ」
シンシア「そう……」
ノワール「君は本当にあの子が好きなんだね」
シンシア「えぇ、そうよ。私はルナが大好き。この身に変えても守りたい存在よ」
ノワール「そっか」
シンシア「これ、あなたが掃除を?」
ノワール「そうだよ。原因は俺だしね」
シンシア「そう」
ノワール「ごめんね」
シンシア「それは本人に言って」
ノワール「そうだね。うん」
シンシア「そういえば、あなた第一王子って呼ばれてたけど……ここにいて大丈夫なの?」
ノワール「さぁ」
シンシア「さぁって……」
ノワール「さっき使いを出したから大丈夫だと思うよ。でも、間違いなく乗り込んでくるね。俺の側近は」
シンシア「それでいいの?」
ノワール「ねぇ、君はあの子のことどう思ってるの?」
シンシア「質問をしてるのは……まあいいわ。そうね、私は……とても大好きな人よ。それで、とてもすごい魔女だとも思ってるわ」
ノワール「本人は『人間』って言ってるけど」
シンシア「ルナはすごい魔女よ。だけど、ルナが『人間』というなら『人間』。それだけよ」
ノワール「そっか……複雑そうだね」
シンシア「そうね……複雑すぎるわ」
ヴァレリア「ヴァンパイア界の第一王子に、自分を『人間』という一人の少女。
赤い月の夜、彼らは出会った。
それぞれの事情や想いが交差したとき、この物語は幕を開ける」
To be continue……
―――――
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