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※こちらの台本を利用する際には、必ず【台本を使うにあたってのお願い】を読んでからにしてください

 

~30分  ♂2:♀3:不0    ファンタジー/一部叫び有/オリジナル  

 

 

 

ルナ=シュラプネル♀……年齢不詳だが、見た目は10代後半。魔女だが人間と言い張る

            ノワールに対してつっけんどんな態度をとる

            基本はクールだが、感情的になることも

 

ノワール=アヴァロン♂……表情が少ない静かな青年。

               常に頭の中で思考を巡らせている。ヴァンパイア界の第一王子

              第一王子であるがゆえに知らないことも多い

 

シンシア♀……ルナの使い魔の黒猫。性格はルナに共通してるものがあるが、基本的に元気でかわいい(ここ重要)

              猫verと人間verでは声を少し変わる

        ルナほどではないが、ノワールに対してつっけんどんな態度をとる

 

ヴァレリア=ディラック♀……ノワールの側近。20代くらいの女性。お姉さんキャラ

 

ファビウス=ランドルフ♂……ノワールの側近。10代前半でかわいげのないけど元気な男の子。ツンデレなところも

              シンシアとよくケンカしてる

 

――――――

役表

 

ルナ♀:

ノワール♂:

シンシア♀:

ヴァレリア♀&奥さん:

ファビウス&店主♂(2人):

 

――――――

 

 

ヴァレリア「ファビウス」

 

ファビウス「どーしたの? ヴァレリア」

 

ヴァレリア「今アルフィーから伝言が」

 

ファビウス「その段階で嫌な予感しかしないのは、気のせい?」

 

ヴァレリア「今あなたが思ってることでほぼあってると思いますよ」

 

ファビウス「あの人……まさか人間界に留まることにしたとか言ってないよね?」

 

ヴァレリア「残念ながら、その通りです」

 

ファビウス「あんの……バカ主ーーーーー!!!!」

 

 

 

ヴァレリア「赤い月に導かれて 第二話 居候」

 

 

 

ルナ「……ん……ここ、は……」

 

シンシア「ルナ!」

 

ルナ「シンシア?」

 

シンシア「この、馬鹿ちん!!」

 

ルナ「なに? いきなり人を馬鹿呼ばわりして」

 

シンシア「あれを馬鹿と言わずになにを馬鹿というのよ! この馬鹿! 家で魔法は使うわ、挙句の果てにはここら一帯を壊しかけるわ……」

 

ルナ「それは……ごめんなさい、シンシア。頭に血が上りすぎてたわ」

 

シンシア「でも、目が覚めてよかった……」

 

ルナ「ねぇ、あの後どうなったの?」

 

シンシア「あいつがここにルナを運んだのよ」

 

ルナ「そう……あの男は?」

 

シンシア「帰れって言っても無駄だから、この階のどっかの空き部屋を適当に使わせたわ」

 

ルナ「そう……ごめんなさい、シンシア」

 

シンシア「ルナ、お願いだからあの詠唱はもうしないで。あれの代償は……」

 

ルナ「そうね……失念してたわ。あれは最低限以外は使わないようにするから、泣かないで?」

 

シンシア「な、泣いてなんかないわよ! まったく……」

 

ルナ「はぁ……片づけしないとね……」

 

シンシア「そのことなら問題ないわよ?」

 

ルナ「なぜ?」

 

シンシア「あの男が全部やってくれたのよ」

 

ルナ「……そう」

 

シンシア「ルナ、大丈夫? 立てる?」

 

ルナ「……えぇ、大丈夫よ。のどが渇いたわ」

 

シンシア「キッチンに行きましょ」

 

ルナ「えぇ」

 

 

 

<キッチン>

 

ノワール「あぁ、目が覚めたんだね」

 

ルナ「……えぇ」

 

ノワール「よかったぁ、ハラハラしたよ。目が覚めないんじゃないかって」

 

ルナ「……シンシア」

 

シンシア「なに?」

 

ルナ「私は、どのくらい寝てたの?」

 

シンシア「半日よ」

 

ルナ「ということは、今、昼よね」

 

シンシア「そうね、昼ね」

 

ルナ「たしかこのキッチンって日差し入るわよね。

   というか、今ガッツリ日差し入ってるわよね」

 

シンシア「そうね。ぬくぬくでお昼寝日和だわ」

 

ルナ「……ヴァンパイアって、日の光って大丈夫なのかしら」

 

シンシア「そうね。あの人日の下にいるわね」

 

ノワール「ん? 飲む?」

 

ルナ「結構よ。

   ……あれは、ヴァンパイアなのかしら?」

 

シンシア「そうね、ヴァンパイアね」

 

ノワール「ん? あぁ、俺が日に当たってることが不思議なのか」

 

ルナ「えぇ、そうよ」

 

ノワール「人間界では俺たちヴァンパイアは日の光に当たると死ぬ、って言われてるけど、あれ、事実じゃないから」

 

ルナ「そう……まぁ、人間が勝手に作ったものだものね」

 

ノワール「うん。生態系で言うと、ヴァンパイアは日の光を浴びても死なないし棺でも眠らない。だけど純銀に触れると腐るのは本当。

     あと、木の杭で心臓刺されたら死ぬのも。ただし、樫の木に限るけどね」

 

ルナ「……そんなに自分の弱点を話していいのかしら?」

 

ノワール「必要があれば記憶を消せばいいだけ」

 

シンシア「そんなことできるの?」

 

ノワール「あぁ。夜に言った『人間に認知されるべからず』という戒律。認知されたら、記憶を消すシステムだから」

 

シンシア「なるほどね」

 

ルナ「……ごめんなさいね」

 

ノワール「?」

 

ルナ「あのときよ。頭に血がのぼりすぎてたわ」

 

ノワール「俺こそ、ごめんね」

 

ルナ「別に……」

 

ノワール「でもやっぱりまだここを出ていく気はない」

 

ルナ「……」

 

ノワール「こちらにも事情があるから。そう簡単に引けないんだ」

 

ルナ「……はぁ。わかったわよ」

 

シンシア「ルナ、いいの?」

 

ルナ「今回のことは私にも非があったわ。それに、なに言っても動いてくれなさそうなんだもの」

 

ノワール「そうだね、ここを動くつもりはないよ」

 

ルナ「諦めましょ」

 

シンシア「……そうね、それが賢明ね」

 

ノワール「ごめんね」

 

ルナ「悪いと思うなら今すぐ出て行ってほしいところよ」

 

ノワール「うん、それは無理だね」

 

ルナ「ふんっ……」

 

シンシア「ルナ、何飲むの?」

 

ルナ「そうね……オレンジペコーを」

 

シンシア「わかったわ。ルナ、お願い」

 

ルナ「はいはい……<ヴィスリア>」

 

(シンシアが猫から人間へ)

 

シンシア「ん~! やっぱり違和感しかないわね、ニンゲンの姿って」

 

ルナ「お願いね、シンシア」

 

シンシア「は~い。 ほんっとルナは私の紅茶好きよね」

 

ルナ「だってシンシアのが一番おいしいんだもの」

 

シンシア「照れるじゃないの」

 

ルナ「ふふっ」

 

ノワール「えーと……ちょっとまって」

 

ルナ「……なに」

 

ノワール「その子、あの猫ちゃん?」

 

シンシア「そうよ」

 

ルナ「一時的なものよ」

 

ノワール「これは驚いたな」

 

シンシア「どこがよ。驚いてるならもっと驚いてる雰囲気出したらどうなの」

 

ノワール「あぁ……ごめんね? これでも一応驚いてるんだけど……」

 

シンシア「見えないわよ」

 

ノワール「ねぇ、猫ちゃん」

 

シンシア「その猫ちゃんってのやめて」

 

ノワール「でも、俺君の名前知らないよ?」

 

シンシア「嘘おっしゃい! さっきもだけど、何度かルナがあんたの前で名前呼んでるはずよ」

 

ノワール「そうだね。でも、君の口から聞いてないから」

 

シンシア「ほんと、変なやつ……シンシアよ」

 

ノワール「シンシア?」

 

シンシア「そう。私はルナの使い魔、シンシア」

 

ノワール「そっか。俺はノワール。ノワール=アヴァロン。

     ヴァンパイア界アヴァロン族でヴァンパイア界の第一王子」

 

シンシア「そう」

 

ノワール「それで、君は?」

 

ルナ「……ルナ=シュラプネル」

 

ノワール「そう、月の女神と同じ名前なんだね」

 

ルナ「えぇ、そうよ。だから魔法に関するご加護も受けやすいの」

 

ノワール「なるほど……」

 

シンシア「はい、ルナ。できたよ」

 

ルナ「ありがと、シンシア」

 

シンシア「ほら、あなたのも」

 

ノワール「ありがとう」

 

シンシア「別に、ついでよ」

 

ノワール「そっか」

 

シンシア「それよりルナ、元の姿に戻して。

     この姿でいるの好きじゃないのよ」

 

ルナ「えぇ。<ヴァスリエ>」

 

(シンシアが猫の姿にもどる)

 

シンシア「にゃあん」

 

ノワール「魔法って便利なんだね」

 

ルナ「えぇ、だけどこの世はすべて等価交換。 魔法を使うごとに魔力という代償を支払っているのよ」

 

ノワール「その魔力ってのはそのうち回復するのかい?」

 

ルナ「えぇ、回復するわ」

 

ノワール「そうなんだ」

 

ルナ「でも」

 

シンシア「ルナ、そこまでよ」

 

ルナ「っ……そうね。ありがとうシンシア」

 

シンシア「全く、ルナってば昔からうっかりなところあるんだから」

 

ルナ「そんなことないわよ」

 

シンシア「あら、じゃあこの前ワンピースの前と後ろを間違えて着てたのはどこのどなたかしら?」

 

ルナ「あ、あれはたまたまよ」

 

シンシア「それじゃあパスタ作るのに、そのパスタを買い忘れたのはどこのどなたかしら?」

 

ルナ「~~~っ! それをいうならシンシアだって、私と間違えて別の女性に着いて行ったじゃない!」

 

シンシア「なっ! それは背格好もワンピースも似てたからよ!」

 

ルナ「それにこの前寝ぼけて森に入って帰れなくて、ニャーニャー泣いてたじゃないの!」

 

シンシア「それはしょうがないじゃない! 寝ぼけてたんだもの!

     それをいうならルナだって、キャベツとレタスをこの間まで見分けられなかったじゃない!」

 

ルナ「それは今はもう見分けられるわよ!!

   シンシアなんて調子乗って木の上にのぼって、降りられなくなってたじゃない!」

 

シンシア「あ、あれはたまたま降りれなかっただけよ!」

 

ルナ「へぇ~。なら、家の屋根に上って降りられなかったのは?」

 

シンシア「あ、あれもたまたまよ!!」

 

ルナ「へぇ、たまたま、なのね!」

 

シンシア「そ、そうよ!! それをいうならルナだって……」

 

ノワール「あの、」

 

ルナ・シンシア「なに!?」

 

ノワール「紅茶、冷めちゃうよ」

 

ルナ「あ……」

 

シンシア「……ぬるくなっちゃったわね」

 

ルナ「それは問題ないわ。だって、シンシアの紅茶は冷めてもおいしいもの」

 

シンシア「もう、照れるじゃない」

ルナ「ふふっ」

 

ノワール「ねぇ」

 

ルナ「……なにかしら」

 

ノワール「冷蔵庫の中、空っぽだよ」

 

シンシア「……あら、ほんとね」

 

ルナ「シンシア、今は何時?」

 

シンシア「んとね、たぶん1時」

 

ルナ「そう。出かけるわよ」

 

シンシア「はーい」

 

ルナ「ニンゲンの姿と猫の姿どっちにする?」

 

シンシア「ん~……ネコ!」

 

ルナ「わかったわ。えーと、お財布は……」

 

シンシア「こっちこっち」

 

ルナ「ありがと」

 

シンシア「お出かけお出かけ♪」

 

ノワール「……」

 

シンシア「……」

 

ルナ「……」

 

シンシア「……待って、なんであなたがついてくるのよ!」

 

ノワール「だって買い物するんでしょ?

     だったら荷物持ちいた方がいいんじゃない?」

 

ルナ「それは……」

 

シンシア「たしかに……」

 

ノワール「だからついていこうかなって」

 

シンシア「……はぁ、わかったわよ」

 

ルナ「だけど、離れてて」

 

ノワール「どうして?」

 

ルナ「自分の容姿をわかってないの?」

 

ノワール「あぁ……そういえばそうだったね。うん、わかった」

 

ルナ「はぁ……(小声)ねぇ、シンシア」

 

シンシア「(小声)なに?」

 

ルナ「(小声)ノワールって、つかみどころなくてどうしたらいいかわからないわ……」

 

シンシア「(小声)それ同意」

 

ルナ「(小声)苦手だわ、あの人……」

 

シンシア「(小声)がんばって、ルナ!」

 

ルナ「はぁ……」

 

ノワール「ねぇ」

 

ルナ「なに」

 

ノワール「街までどうやって行くんだい?」

 

ルナ「さすがに昼間から移動魔法使うわけにもいかないから、歩くわよ」

 

シンシア「えーー!」

 

ノワール「歩くの、やなの?」

 

シンシア「歩くのは疲れるもの。ねーえー、ルーナー」

 

ルナ「肩には乗せないわよ」

 

シンシア「えーーー!」

 

ノワール「それじゃ、俺の肩に乗る?」

 

シンシア「結構よ!」

 

ノワール「そっか…」

 

シンシア「(小声)ねぇ、ルナ。なんか犬の耳が見えるのは私だけかしら」

 

ルシアンナ「(小声)大丈夫、私もだから。垂れてるわね。ついでに尻尾も垂れてるわね」

 

シンシア「……あああ!! もう、わかったわよ!」

 

ノワール「……! うん」

 

シンシア「はぁ……」

 

ノワール「軽い……あったかいね」

 

シンシア「そりゃあ生きてるもの」

 

ノワール「そっか……」

 

シンシア「にゃ!? ちょ、なにするのよ!」

 

ノワール「ん? 頭撫でてるだけだけど」

 

シンシア「やめて! 気持ち悪い」

 

ノワール「わかった……」

 

ルナ「はぁ……ちょっと、遊んでないで早くいくわよ」

 

ノワール「うん」

 

ルシアンナ「はぁ……」

 

 

(間)

 

シンシア「ルナ! アイス!」

 

ルナ「アイス?」

 

シンシア「食べたい~」

 

ルナ「わかったわよ。でも、人間になりなさいよ」

 

シンシア「えー……わかったわよぉ」

 

ルナ「えーと、人気のない場所……」

 

ノワール「こっち」

 

ルナ「……ありがと」

 

シンシア「早く! 早く!」

 

ルナ「もう、少しは待ちなさい」

 

シンシア「アイス~!」

 

 

(間)

 

ルナ「ここなら、大丈夫かしら」

 

ノワール「だれもいないよ」

 

ルナ「そう、ありがとう。<ヴィスリア>」

 

シンシア「ん~! ルナ! アイス!」

 

ルナ「はいはい。はい、これで買ってきなさい」

 

シンシア「行ってきまーす!」

 

ルナ「もう、あの子ったら……」

 

ノワール「ルナは、シンシアのこと好きなの?」

 

ルナ「愚問ね。大好きよ。シンシアと私は2人で1つなの。どちらかが欠けてもだめ。シンシアは、特別なのよ」

 

ノワール「……そっか」

 

ルナ「えぇ。シンシアの後を追うわよ」

 

ノワール「わかった」

 

 

(間)

 

 

店主「いらっしゃい、注文は?」

 

シンシア「えーと……ダブルのコーンで~、ブラッドオレンジとラ・フランス!」

 

店主「はいよ、ちょいと待ってな」

 

シンシア「は~い♪」

 

 

ノワール「ルナ、あそこにいるよ」

 

ルナ「ほんとね。もう、満面の笑みじゃない」

 

 

シンシア「アイス~♪」

 

店主「おまちどうさま。落ちないように気をつけろよ」

 

シンシア「はーい!」

 

ルナ「シンシア、何買ったの?」

 

シンシア「んとね、ブラッドオレンジにラ・フランス!」

 

ルナ「またかなりマイナーなものを買ったわね」

 

シンシア「だって好きなんだもん!」

 

ルナ「はいはい。さ、行きましょう」

 

シンシア「ふんふんふ~ん♪ ん~! おいし~!」

 

ルナ「そんなにおいしい?」

 

シンシア「うんっ!」

 

ノワール「それが、アイス?」

 

シンシア「そうよ。見たことない?」

 

ノワール「うん。どんな味なの?」

 

シンシア「冷たくて甘いわ」

 

ノワール「へぇ……」

 

シンシア「……食べる?」

 

ノワール「……いいの?」

 

シンシア「ダメだったら言わないわよ」

 

ノワール「ありがとう……ん、甘い」

 

シンシア「冷たくておいしいでしょ?」

 

ノワール「うん、おいしい……」

 

シンシア「……あげる」

 

ノワール「……! ありがとう」

 

シンシア「……そんなにうれしいものなの?」

 

ノワール「うん、だって、おいしい……」

 

シンシア「……変なの」

 

ルナ「……まったく、ノワール、それをシンシアに返して」

 

シンシア「ルナ、私が自分の意思でノワールにあげたからいいの」

 

ルナ「でも、それはシンシアが食べたいから買ったのよ。ノワールのためじゃないわ」

 

ノワール「そう、だよね。ごめん……」

 

シンシア「ルナ! その言い方は……」

 

ルナ「落ち着きなさい。別にノワールから取り上げるわけじゃないわ……新しいの、買うわよ」

 

シンシア「ルナ……」

 

ノワール「……ありがとう、ルナ」

 

ルナ「別に……」

 

シンシア「意外ね、ルナが買ってあげるなんて」

 

ルナ「べ、別に、そんなこと……」

 

シンシア「あるわよ」

 

ルナ「ほ、ほら、早く行くわよ」

 

 

 

シンシア「あ」

 

ルナ「どうしたの? シンシア」

 

シンシア「これ、かわいい……」

 

ルナ「これは……花?」

 

店員「はい、それは遠い東にある異国のストラップでして、サクラという花なんですよ」

 

ルナ「これは見たことない生地と柄……」

 

店員「はい、縮緬というものです。先ほど届いたばかりの人気商品で、数が少ないんですよ」

 

ルナ「シンシア、ほしい?」

 

シンシア「うんっ!」

 

ルナ「これ、全部色と柄違うけど、どれがいい?」

 

シンシア「え~と……この薄ピンクので、ん~……これ!」

 

ルナ「それじゃお会計してくるわね」

 

シンシア「ルナも! ルナとお揃いがいい!」

 

ルナ「そういえば、お揃いなんてしたことなかったわね……

   わかったわ、お揃いにしましょう」

 

シンシア「やった!」

 

ルナ「どれがいいかしら……」

 

シンシア「ルナなら、えーと、赤色のこれがいいんじゃない?」

 

ルナ「ありがと、シンシア。お会計しましょうか」

 

シンシア「はーい!」

 

 

店員「ありがとうございました」

 

ルナ「さて、寄り道しちゃったわね。あとは果物だけ?」

 

シンシア「そうね果物屋さんは~……あ、隣だったの」

 

ルナ「あら、珍しい。石榴があるなんて」

 

ノワール「どんな味なの?」

 

ルナ「そうね……食べるのは面倒だけど、甘酸っぱくておいしいわよ」

 

ノワール「へぇ……」

 

シンシア「スターフルーツもある!」

 

旦那「おっ、嬢ちゃん、石榴もスターフルーツも食べたことあんのかい?」

 

ルナ「えぇ」

 

奥さん「まあ、珍しい。最近の子はまったくこういうの食べないからねぇ……おいしいのに」

 

旦那「どうだ、買ってかねぇか? 石榴は3個で500リンだが7個で、スターフルーツは2個で500リンを5個で500リンだ!」

 

シンシア「そんなにまけちゃっていいの?」

 

奥さん「いいのいいの。どうせ売れないし。廃棄するにはもったいないから、お嬢さんが買ってくれると嬉しいのよ」

 

ルナ「わかりました。それじゃあ、石榴とスターフルーツ、それとオレンジ3個にリンゴ3個ください」

 

旦那「あいよ!1300リンだ!」

 

奥さん「ありがとう」

 

 

(間)

 

 

ルナ「さて、これで必要なものは全部? シンシア」

 

シンシア「そうね。私も猫の姿に戻ったし、忘れてることはないと思うわよ」

 

ルナ「そう、帰りましょ」

 

ノワール「ルナ、荷物」

 

ルナ「……わかったわよ、はい」

 

ノワール「うん」

 

ルナ「おいで、シンシア」

 

シンシア「うんっ」

 

ルナ「ふふっ……っ!?」

 

シンシア「ルナ?」

 

ルナ「あれは……いえ、なんでもないわ。早く行きましょ」

 

ノワール「…………」

 

 

(間)

 

 

シンシア「やっとおうち着いたー!」

 

ルナ「まだ門じゃない。家までもう少しあるわよ」

 

シンシア「そうだけど、結界の外と中じゃなんか違うのよ」

 

ルナ「それはそうでしょ」

 

シンシア「ほら、早く鍵開けて」

 

ルナ「はいはい…」

 

ファビウス「ノワールさまあああああああ!!」(遠い)

 

ルナ「……? 声?」

 

シンシア「声、よね」

 

ファビウス「ノワール様あああああああ!!!」

 

ルナ「……ヴァンパイア?」

 

シンシア「今、空から降ってきた!?」

 

ファビウス「ん、なんだ? ただの猫がしゃべった?」

 

シンシア「失礼ね! 私は使い魔よ!」

 

ファビウス「ふーん、どうでもいいや」

 

シンシア「よくない!」

 

ファビウス「あ、そんなことよりノワール様!! これはどういうことなんですか!?」

 

ノワール「ファビウス」

 

シンシア「そんなことよりじゃなーーい!」

 

ルナ「シンシア、無駄よ。あきらめなさい」

 

シンシア「どいつもこいつも……私をただの猫扱いして……」

 

ファビウス「まったく、ヴァレリアからアルフィーの伝言受けてすぐに飛んで来たかったのに、

      こういうときに限って大量の仕事が回ってくるし……やっと終わったらもう夕方だし……」

 

ノワール「ファビウス、ヴァレリアは?」

 

ヴァレリア「ここですよ」

 

ノワール「やあ」

 

ヴァレリア「やあ、じゃありません。きっちりと、説明お願いします」

 

ノワール「はぁ……わかったよ」

 

ファビウス「なあ、中入ろうぜ」

 

ルナ「待ちなさい」

 

ファビウス「ん? なんだ?」

 

ルナ「ここは私の家。あなたたちに勝手に入られる意味が分からないわ」

 

ファビウス「でもここにはノワール様が留まってるんだろ? だったら僕らだってここにいてもいいじゃないか」

 

シンシア「なにそのこじつけ!」

 

ヴァレリア「ファビウス。やめなさい。ごめんなさい、不躾にうちの主とファビウスが」

 

ファビウス「だってヴァレリア~……」

 

ヴァレリア「だって、じゃありません。まったく……ダメですよ、そんな態度をとっては。

      私たちヴァンパイアにとってはあたりまえでも、他種族からしたらあたりまえではないことのほうが普通なんですから」

 

ファビウス「む~……」

 

ルナ「それなら……」

 

シンシア「ルナ、なんか長引きそうだし、ここで立ち話するのもなんか、うん……」

 

ルナ「……もう、わかったわよ。ほら、入るなら入っちゃって」

 

シンシア「ただいま~」

 

ルナ「なんでこう次から次へと……」

 

 

 

シンシア「さらに増えた来客。

     騒がしくなる予感と何かが起こる予感を胸に、ルナは彼らを自分のテリトリーへと招き入れたのだった」

 

―――

縮緬「ちりめん」

石榴「ざくろ」

 

他に読み方がほしい漢字がありましたら、HPのINQUIRYまでお申し付けください

 

第一話はこちら

 

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